持続可能な開発目標

デンケン・ハイデンタルとSDGs

昭和時代の実体験を通して見えてきた「持続可能性」

2020年初旬に親会社であるエア・ウォーター株式会社から、グループ全体としてSDGsに取り組む号令が出た時、サステナビリティについて色々と調べてみました。当時は「持続可能性」と言われてもピンとこなかったのですが、ある本に「昭和時代の経済活動はサステナブルではなかった」と書かれていて、なるほどそういうことかと腑に落ちたんです。

我々の世代が子供だった1960年~1970年頃というのは日本経済がどんどん発展していった時期で、生活も豊かになり、その副産物として公害がありました。私は兵庫県の尼崎市出身で、実家が阪神工業地帯の一番東側にあるんですよ。当時は光化学スモッグというのが普通にあって、体育の授業中に注意報が発令されて避難したりしていました。そのうち水俣病や四日市ぜんそくなど、日本各地で健康被害が発生するようになり、そういう深刻な状況になって初めて公害問題にメスが入れられたわけです。それまでは海も川も空気も汚れている状態が当たり前で、だめだとわかっていながらも社会全体が許容していたんですよね。今から見れば完全にアウトですが、当時はそれが普通でした。 私たちの作っている製品も10年後、20年後に見た時にどうなのか、そこの観点から考えていくことがサステナビリティにつながると考えています。特に弊社の歯科材料は患者さんの口の中に入るものなので、長い目で見て安全性や安定性を検討することは非常に大切です。

豊かな国にも、貧しい国にも、歯科医療を届けるために

近年、医科歯科の連携が重要視されるようになってきています。口の中の健康が実は全身の健康にも大きく関係していることがわかり、重篤な病気になる前に口腔内をしっかりケアして健康寿命を伸ばしていきましょう、という風潮に変わってきているのです。そういった点においては、弊社も「すべての人に健康と福祉を」というSDGsの目標に貢献できていると感じています。

海外に目を向けてみると、歯科治療を経済的な理由や技術的な理由で受けられない国があったり、同じ国の中でも治療の質に格差があったりします。一方欧米ではただ単に歯を治すのではなくきれいな歯、あるいは天然の歯に近い歯にしたいという、いわゆる審美歯科が発達しています。我々がそういった格差の現実を変えていくことは難しいかもしれませんが、それぞれの国の状況に合った価格帯の材料を作っていくことで治療の選択の自由が広がればと考えています。おいしく物を噛んで食べるというのは、誰にとっても大切なことですからね。

歯科技工士の労働環境改善が日本の歯科医療を救う

現在歯科技工士の業界は高齢化が進んでおり、労働環境が理由で新たな担い手も少ない状況です。これからますます社会全体の高齢化も進んでいく中で、このままでは歯科医療が成り立たなくなってしまう。我々としては、もっと歯科技工士さんが楽しく充実した環境で、しっかり稼げるような環境にしていくことがテーマだと考えており、実際にいくつかのサービスが動き始めています。

弊社の「SOLA」という製品群もデジタルの歯科技工に特化したシリーズですが、詰め物や被せ物などはすでに3Dプリンターで作れるようになっており、その点においては歯科技工士さんの労働時間も圧縮できているかなと思っています。一方で入れ歯は未だに従来のアナログなやり方でしか製造できないため、かなり労働の負荷が高い。このあたりを改善していくことが「働きがいも、経済成長も」、「産業と技術革新の基盤をつくろう」といったSDGsにつながっていくと考えています。

「SDGs」という新たな視点が企業文化を創っていく

社内ではSDGs委員会のメンバーが牽引して節電やコピー紙、紙コップの削減といった取り組みを行ってくれています。活動を始めた当初はSDGsが読めない人もたくさんいましたが、少なくともそういうことはなくなってきているので、間違いなく会社としては進歩していると感じています。一方で「あの人たちは何か特別な活動をしているな」と思われている部分もまだまだあるので、引き続き啓蒙活動を続けることで社員全員がごく自然にSDGsを意識するようになれば、そこで初めて浸透したと言えると思っています。

私としては、事業の一環としてSDGsがあるという認識なんです。SDGs自体が目的になってしまえば慈善事業のようになってしまいますからね。それでも今お話したような社会問題の数々が事業を通して少しでも改善できたらいいなと考えるようになったという点では、私自身取り組みの前と今とでは視点が変わったのかなと感じています。 例えば我々の製品は医療機器なのでそれ相応のパッケージングをしていますが、本当に今のままで良いのか、過剰包装になっていないか、といった議論が社内でもできるようになってきています。我々はSDGsのために仕事をしているわけではないけれど、日々の仕事の中にどうやってSDGsを取り込んでいけるのか、そういう観点を持つことで、より柔軟な発想が生まれるようになっていけばうれしいですね。

代表取締役社長 奥野裕志

歯科医療分野への貢献

- 「食べる」 「話す」 「表情を作る」 「全身のバランスを整える」 -

歯には 人々が豊かで幸せな生活を送るために必要な様々な機能があります。老化や口腔環境の悪化によって失われた歯を治療・修復せず放置すると、認知症の発症や転倒リスクが高まるとの報告もあるなど、「歯の健康」が全身の健康と密接に関連していることが広く知られるようになりました。その結果、口腔内の健康管理がますます重要視されるようになり、歯科医療の需要も高まっています。

デンケン・ハイデンタルは歯科技工用機器・材料の開発、製造、販売までを一貫して行うメーカーとして、高品質な製品の提供により、人々がいつまでも健康で笑って暮らせる未来を創造します。

今後は従来器材はもとより、さらなるデジタル器材の開発や、メインのお客様である歯科技工所へのソリューション提供を通じて、歯科医療の発展に貢献できるよう邁進いたします。

歯科技工のこれから

◆そもそも歯科技工士って?

歯科技工士は歯科医師の指示に基づいて患者の治療に必要な歯科技工物(入れ歯や被せ物等)の製作や加工、修理を行う国家資格が必要な医療技術専門職です。一般的に知られる機会は少ないですが、歯科技工士は職人技とも言える高度な技術を有し、歯科医療を支える「縁の下の力持ち」的な存在として、私たちの歯の健康を守る上で欠かせない重要な役割を担っています。

しかし近年、歯科技工業界では高齢化が進み、技工士全体の約半数が50歳以上であると言われています。加えて歯科技工士養成施設や入学者の数は年々減少しており、新たな担い手が少なくなってきています。その一方、社会全体の高齢化などで歯科医療の需要が高まり、歯科技工士の業務量は増加しつつあるのが現状です。

◆歯科技工のデジタル化

入れ歯や被せ物などの歯科技工物ができるまでには様々な工程があり、各工程ごとに細やかな技術が求められます。従来、技工物の製作過程に時間がかかるだけでなく、技術の習得にも年月や経験を必要としてきました。

しかしながら、近年CAD/CAMと呼ばれる、コンピューターを用いて設計や製造を行う技術が導入され、デジタル化が進みつつあります。歯科技工においてのCAD/CAMとは、被せ物や詰め物などの補綴(ほてつ)物をCADやCAMのシステムを用いて設計、作製する技術を指します。従来はほとんど手作業で行っていた工程をデジタル化することにより、作業の簡易化、効率化を図ることができます。また、品質を一定に保つなどのメリットもあり、今後ますます期待される分野です。

※CAD: Computer Aided Designの略。コンピューター上で設計や製図を行うツール。
 CAM: Computer Aided Manufacturingの略。コンピューター上で加工用データを作るツール。

デジタル化のメリット

 

当社は今後デジタル分野に注力し、作業にかかる負担を軽減し、歯科技工士の皆さんがより良い技工物を製作できるような製品の開発・製造を目指しています。

当社ができること

当社はデジタル技工関連製品に、歯科技工業界への更なる貢献の可能性を見出し、2021年にデジタルソリューションブランド「SOLA」を立ち上げました。「SOLA」は”SEED・OF・LABORATORY”の略で、技工所が飛躍するための種となってほしい、そして「空」のように大きな存在となってほしい、との2つの願いが込められています。

2030年ビジョンとして、CAD/CAM関連の機材はもちろんのこと、工程管理のデジタル化や製作方法の一新など、より一層のデジタル技術の活用、Only Oneの商品開発に向けて日々研究に取り組んでいます。作業にかかる負担を軽減して、歯科技工士がより良いものを作製できるようになることで、患者さんの満足度も上がり、歯科医療がより発展することを願っています。

SOLA製品群については、製品ページをご覧ください。

 

SDGs 推進委員会について

SDGs を通じた社会貢献を推進するため、2020 年10 月より委員長1 名、委員3 名で活動を開始いたしました。発足当初から社内でSDGs の考え方をどう広めていくかを課題に、小さなことから、一人一人が楽しんで参加できる工夫をしながら推進活動に取り組んでまいりました。
今後は、全社的な活動として規模を拡大できるよう、月に1 度の会合を通じて様々な企画を提案をしています。

これまでの活動

  • 紙コップ削減
  • SDGs スローガン総選挙
  • SDGs News(社内報)による情報発信
  • 照明スイッチマップ・ステッカー貼付による節電啓蒙活動
  • ペーパーレス、プラゴミ削減に向けた現状調査

スペシャルインタビュー:SDGs委員会

委員長  I(取締役・技術開発部 部長兼機器開発グループ長)
委員  M(業務改革・IT推進部 主任)
委員  T(技術開発部 品質保証グループ)
委員  S(営業本部 海外営業部)

―まず、SDGs委員会発足時期と活動内容を教えてください

I:委員会は2020年10月に発足しました。当初は健康問題とか貧困問題とか、かなり大きな規模の問題に取り組もうとしていたのですが、委員会発信で推進していくにはもう少し身近なことの方が良いよね、という話になり、紙コップやコピー用紙の削減、節電といった取り組みを行ってきました。

M:SDGsに取り組んでいる会社って、大企業が多いんですよ。そうするとやっていることも規模が大きくて、産学連携の取り組みですとか、弊社のような産業であれば産業廃棄物を減らす、リサイクルの仕組みを変えるといったことになってくる。それだとかなりコストもかかってきますし、SDGs自体が目的になって会社の利益が出ないといった本末転倒なことになりかねないので、身近なところから改善していくことになりました。

T:私も最初は何か新しいことを始めないといけないのかな、と思っていたんですけど、他社の事例を色々調べていくと、今ある事業や活動をSDGsにあてはめたらどうなるのか、という考え方をされているところが多かったんです。それで弊社の方向性をSDGsの観点から見直してみたら「なんだ、意外とSDGsしてるやん」ってなって(笑)。そこからわざわざ新しいことというよりは、視点のひとつとしてSDGsがあるんだな、と考えるようになりました。

―普段のお仕事の中でも「これSDGsに使える」といったことを考えたりしますか

T:仕事をしながらわざわざ考えてはいませんが、この会社に入社した時に「前と違うな」と感じたところが改善できるところだと感じたので、今も「あれ?」と思う感覚は大事にしています。

S:私も常にSDGsしようとは思っていないんですけど、例えばネットニュースでたまたま見た内容や日常生活で「これはSDGsだな」と感じたことなどは、メンバーにチャットで共有するようにしています。そういう小さなやりとりを積み重ねてきて、今ではメンバー同士本当に「良い仲間」といった感じです。皆さん問題意識が高く、きちんと自分の考えも持っているので常に刺激をもらっています。

―紙コップ削減の取り組みはどのように行ったのでしょうか

T:まずは紙コップを削減しましょう、という通達を全体に出し、それからMさんの息子さんが描いてくれたポスターを給茶機に貼りつけて訴求しました。地道な活動ではあったんですけど、皆さん意外とすぐにマイコップに切り替えてくれて。その後取り組みに寄せられた感想を社内報にまとめて発信しました。

I:私は最初、紙コップ削減ではなくてすべて撤去してしまえば良いのではないかと思っていたんです。でも彼らが衛生面とか、色々な理由で使いたい人がいるだろうから止めるのは止めましょう、自主性に任せましょうと言ってくれて。今思えば撤去しなくて良かったと思っています。もししていたらもっと反発も大きかったんじゃないかな。

T:Mさんの息子さんの絵も良かったんですよ。子供がSDGsのことわかっているのにやらないわけにはいかない、といった大人の胸に刺さるメッセージがありました。

M:会社での取り組みを家で話したら「俺が描いたる!」とか言って勝手に描いたんですけどね(笑)。それを持ってきてスキャンしました。

S:意外と社員の皆さんもやり方がわからないだけで、こちらから呼びかけたらやってくれるんだと気付かされた活動でした。

―ありがとうございます。ほかの活動についても教えてください

S:節電の取り組みは、電気のスイッチが6~7個まとまっているところがフロアの各所にあるんですけど、どのスイッチを押したらどの電気が消えるかがわかならいという意見があったので、電気の位置とスイッチを色で対応させたマップを作って貼りました。

M:SDGsのスローガンを決めたイベントでは、事前に16種類のスローガン候補を委員会で選定し、実際の選挙のようなポスターと投票箱を作って社内に設置、その後2週間の投票期間を設けて社員に気に入ったスローガンを投票してもらいました。

S:これは本当に楽しかったですよね。

T:投票は本社だけでなく、各営業所にもメールでお願いしたんですけど、ちゃんと皆さん返信してくれて。これまでの活動の中で一番リアクションが大きかったと思います。開票の時もメンバーで集まってドキドキしながら行い、1位が決まった瞬間にだるまを出す、みたいな、私たち自身も遊び心を取り入れて楽しむことのできたイベントでした。こういう空気感がもっと皆さんにも伝われば良いなと思って活動を続けています。

M:やっぱり活動を続けていくためには、私たち自身がサステナブルでなければいけないと思うんです。メンバー全員が仕事と兼任で活動しているので、高い目標を掲げてSDGsのことばかり考えていたら疲弊してしまう。だから責任感は持ちつつ、自分たちが継続できる取り組みややり方を模索していく必要があるのかなと思っています。

―活動を通して社内にSDGsは浸透していると感じますか

S:社内にSDGsに取り組んでいる人がいて、そういう考えがあるというのは広まったと感じています。たまに私の顔を見た人が「あぁ、あんまり印刷したらあかんな」と言ってきたりするので(笑)。

T:取り組みを行う上では現状の把握が大事なので、「こういうデータを出してほしい」と他部署の方にお願いすることがあるんですけど、お願いし続けていると「今月分はこれだよ」と、こちらから言う前にデータを出してくださる方もいらっしゃいます。そういう時は、私たちの活動を想像して動いてくれている人がいるんだな、と感じてうれしくなりますね。

―今後の取り組みとして、何か構想があれば教えてください

M:私たち委員会メンバーだけだと、どうしてもアイデアに偏りが出てくるんですよね。アイデアの量自体も少ないので、いずれは社員皆の意見を吸い上げられるようなアンケートのシステムを構築していければと思っています。その中から実現できそうなアイデアをピックアップして、私たちが交通整理する、みたいな仕組みにできたら良いですね。

S:今は私たちが何かを見つけて、協議して、発信するといったスタイルですが、もっと社員全員がポップなノリで「これはどうかな」みたいに発信して、委員会がそれに取り組んでいけるようなかたちになれば良いなと思います。それともうひとつ、現在自社製品パッケージの削減に向けて調査を進めているのですが、もしもこれが実現すれば色々な部署との連携・協議が必要になってきます。それぞれ重要視している観点もあると思うので、そういったことを議論して成果につなげられるような活動になれば、会社としてもSDGsの活動としても有意義なものになるのではないかと考えています。

I:将来的にはいくつかの選択肢があった時に「SDGsの観点から考えたらこっちが良いよね」という選択を社員皆ができるような風土になっていけばうれしいですね。あとは古い事業所の環境改善など、SDGsの活動をからめて社員の声をかたちにできるようなこともやっていきたいと考えています。

―ありがとうございました