コラム

製品×開発エピソード

キャスコム エスキャスコムシリーズ…高周波真空加圧鋳造機

Developer

技術・製造本部
副本部長 兼 技術開発部長(機器)

当社では初となるCASCOMの看板を背負った高周波鋳造機。
スピード、ランニングコスト、鋳造品質を両立させた 鋳造機の開発エピソード。

キャスコム エスはどんな商品ですか

これまでのキャスコムシリーズはヒーター加熱方式といって、電気をかけるとゆっくり温度が上昇し、 1500度くらいで 金属が溶融される鋳造機でした。ボタンひとつで誰でも鋳造できるため、かなりシェアも広がったのですが、入れ歯に使 用するコバルトやニッケルといった高融点の金属を溶かそうとすると、時間や消耗品のランニングコストがかかるといった課題がありました。
そこでキャスコム エスでは鋳造に高周波を使用しています。高周波は 素材そのものを温めるため、ヒーター加熱方式だと1500度まで温度が上昇するの に2、30分かかるところを、たった2分ほどで到達します。これにより時間もコストも 削減できるようになりました。

キャスコム エスならではの機能があれば教えてください

高周波だと急激に温度が上昇するため、温度センサーを直接金属の中に入れて、低融点の金属でもオーバーヒートすることなく鋳造できるようにしています。また、液晶タッチパネルは対話形式で操作性を向上させ、予備溶融、保持溶融、本溶融の3段階で簡単に鋳造できるよう工夫しました。ほかにもリングを置く台だったり、温度センサーの格納方法だったりと、一見気づかれないような部分にも細かな調整を加えています。

商品化するにあたり
苦労した点を教えてください

社内で初めて取り組む高周波機器だったため、知識と技術の習得に3、4年要しました。参考になりそうな機械をたくさ ん仕入れて研究を重ねたのですが、かなり大きな電流を扱うため、電源をショートさせたり感電したりと、さまざまなト ラブルに見舞われました。また、回転・加圧して金属を鋳型に流し込む方式をキャスコム エスにも搭載し、社独自の最 適な鋳造タイミングを探るのに1年ほど、さまざまな金属で鋳造を重ねました。

お客様からの反響はいかがでしたか

実際に鋳造しやすいとのお声をいただいています。また耐久性の高さも評価していただいていますね。特許の取得、新た な技術を発表することも大切ですが、私はいかにお客様にとって使いやすいものを作れるか、簡単に壊れない機器を完成させられるかを常に念頭に置いて開発しています。それでもやっぱりクレームや故障はあるので、どんなにやってもやり 過ぎということはないと思っています。

今後の商品の展開予定を教えてください

キャスコム エスの技術を応用し、小型で場所を取らない、高速ジルコニアの焼結炉を開発中です。弊社は熱源を使った 機械が得意なので、その技術を生かした製品を今後も開発していきたいと思っています。また口腔ケア用の機械や滅菌器 など、歯科医院向けの製品にも注力していきたいです。

最後に、開発者としての
醍醐味を感じる瞬間を教えてください

ありきたりですが自分でアイデアを生み出して設計し、ものが完成して思い通りに動いた時ですね。開発者の皆さんそう だと思いますが、いいアイデアって寝る前とかトイレや遊びの最中とか、仕事以外の時間に浮かぶことが多いんですよ。 そんな時は自身のメールにアイデアを送信したりしてます。考え過ぎて、やっていたことが上の空になったりする事もあ りますね。歯科技工士さんや歯医者さんの「これがあったら」、「これがなければ」を解決する製品をこれからも生み出 し、真摯なものづくりで歯科業界に貢献していきたいです。

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